業務用加湿器とは
● 加湿器は、3種類の加湿方式のもとにさまざまな種類があり、それぞれ原理や機能が異なります。従って、個々の加湿器の特徴をつかむためには、能力や仕様を表示する用語について理解しなければなりません。
■気化方式
・水をその温度の水蒸気に気化して加湿する方法
■蒸気方式
・水を100℃または100℃以上の蒸気にして噴霧する方法
■水噴霧方式
・微細な水滴を直接空気に噴霧する方法
■水加湿
水を100℃以上の蒸気にして噴霧する蒸気加湿(蒸気方式)に対し、「水噴霧式」や「気化式」のように水を常温のまま気流と熱交換させ加湿する方式の総称
■加湿効率/有効加湿量
「加湿効率」は、気流中に噴霧される水量または気化蒸発量、蒸気量の内、実際にどれだけの量が空気に付加されたかによって表します。
また実際に付加された量を「有効加湿量」といいます。
【気化式加湿器の加湿効率】
・ 気化式加湿器は、水を含んだ加湿モジュール(加湿材)と気流との接触により気化蒸発する水分はすべて空気に付加されるため、加湿効率は100%とみなします。
・ 加湿能力については、気化式の特性で空気の温湿度および風量によって変動するため、加湿器の型式ごとに能力条件を設定して、「標準加湿能力」で表示します。
【蒸気式加湿器の加湿効率】
・ 蒸気式加湿器の加湿効率は、「およそ」100%とみなします。「およそ」としている理由は、空気の温度が低いときは、噴霧された蒸気は空気によって冷やされて凝縮し、水滴となって空気に付加されないことがあるからです。
・ 加湿能力については、電力利用型蒸気発生器など加湿器自体で蒸気を発生する機種では「蒸気発生量」とし、供給蒸気(ボイラなどから供給される一次蒸気など)をそのまま噴霧する機種では「蒸気噴霧量」で表示します。
【水噴霧式加湿器の加湿効率】
・ 水噴霧式加湿器の加湿効率は、噴霧する水の粒径が大きくなれば、未蒸発分の落下やエリミネータで捕捉される量は多くなり、効率は低下します。
・ 加湿能力については、超音波式では「霧化量」、高圧スプレー式では「噴霧量」で表示します。
■飽和効率
・ 加湿による空気の状態変化の中で、飽和点(相対湿度100%)に至るまで、どこまで加湿できるか(加湿のしやすさ)を表す目安。
の空気の状態から湿球温度一定の線上をまで加湿できたとします。
次にの状態点から延長していくと飽和点に至ります。
この-と-の線分比が飽和効率です。
【気化式・水噴霧式加湿器の飽和効率】
【蒸気式加湿器の飽和効率】
飽和効率は、どの加湿方式を採用するかの重要な要素になります。空調設計の中で必要飽和効率が低ければ容易に加湿することができますが、飽和効率が高くなるほど加湿は難しくなり、適用する加湿器の種類が限定されます。必要飽和効率が30%程度であれば、3種類の加湿方式すべてで対応できますが、50%あるいは80%と高くとる必要がある場合は、気化式あるいは蒸気式で選定することになります。
■必要飽和効率
空調条件で必要とされる飽和効率。
■適用飽和効率
必要飽和効率に対し、適用可能な加湿器(機種)方式固有の飽和効率(高圧スプレー式:最大30%程度、超音波式:最大50%程度、気化式:最大80%程度)。
■給水有効利用率
● 「給水有効利用率」は、加湿器への給水量の内、実際にどれだけの量が有効加湿量として空気に付加されたかを表し、節水効果をみる尺度になります。
【気化式加湿器の給水有効利用率】
・ 加湿モジュールの洗浄を目的として、加湿量プラスアルファの給水を行うため、その量が給水有効利用率に影響します。
【蒸気式加湿器の給水有効利用率】
・ 電力利用型蒸気発生器等は、タンクや水槽など、蒸気発生部の水質管理やスケール対策のブロー量、蒸気噴霧管で発生するドレン量が給水有効利用率に影響します。
・ 供給蒸気(ボイラなどから供給される一次蒸気など)をそのまま噴霧する機種では、給水はありませんから給水有効利用率はあてはまりません。
【水噴霧式加湿器の給水有効利用率】
・ 噴霧する水の粒径が大きくなれば、未蒸発分の落下やエリミネータで捕捉される量は多くなり、給水有効利用率に影響します。
■蒸発吸収距離
● 「蒸発吸収距離」は、気流中に噴霧される水分量が空気に吸収されるまでの距離を表します。加湿器を組み込む空調機の大きさにより、選定時の注意が必要です。
【気化式加湿器の蒸発吸収距離】
・ 水分は加湿モジュールで気化蒸発するため、蒸発吸収距離は不要です。
・ この特徴を生かして、コンパクトな空調機にも組み込みが可能です。
【蒸気式加湿器の蒸発吸収距離】
・ 風量と空気の温度によりますが、およそ30℃以下の空気の場合は、噴霧蒸気が凝縮することがあり、エリミネータ(除滴板)の設置が必要です。
【水噴霧式加湿器の蒸発吸収距離】
・ 高圧スプレー式は噴霧する水の粒径が比較的大きいため、相当の蒸発吸収距離が必要になります。また、エリミネータの設置が必要です。
・ 超音波式は空調機が狭く蒸発吸収距離が取れない場合や、およそ30℃以下の空気の場合は、エリミネータの設置が必要です。
※SCA・BNBは水噴霧式加湿器です。